お知らせ/おおるりペットクリニック〜犬・猫・ウサギ・小鳥の動物病院/栃木県矢板市

ブログ

加計学園問題について

0

    最近、加計学園の獣医学部設置に関する、政府の責任者達の無責任な発言には、あきれるばかりです。しかしながら、どのように決着しても、最終的に責任を取らされるのは我々国民ですから、今後の獣医療について問題点を整理しておくことは、新規獣医学部設置の問題が、少しでも良い方向で解決されるために重要なことと思います。最近、私が小動物臨床を学んだ、ダクタリ動物病院の総合院長の加藤 元先生が、上記問題点をわかりやすく書かれたので、先生の許可を取ったうえで、ここに、引用させていただきます。現在の獣医師教育を今後どのように改革していくべきかについて、異論もあることは承知しておりますが、急速に進歩しているライフサイエンスと獣医療を考えるとき、現在の獣医学部が今のままで良い筈はなく、もっとお金と資源を投入し、現在よりはるかに、充実した教育と研究の環境を作り上げなくてはならないと、私個人としても思っています。そして私たちの現場の動物病院まで、その成果が還元されることを願ってます。

     

    https://www.facebook.com/gen.kato.566

    2017-07-19
    加計学園 獣医学部・獣医学科 問題
    〜 報道されない真の問題とは 〜


    北海道大学大学院獣医学研究科 客員教授
    コロラド州立獣医科大学 客員教授/日米親善大使
    ダクタリ動物病院 総合院長
    加計学園 千葉科学大学 客員教授
    加藤 元


    昨今、テレビ・新聞などメディアで取り上げられない日はない、加計学園の獣医学部・獣医学科新設の問題。
    加計学園関係者をはじめ、愛媛県今治市や京都府などの自治体、そして文科省や内閣府、さらには、安倍首相まで関与しないわけにはいかない、非常に大きな問題に発展している。
    実は、私も、加計学園の客員教授を務めている。以前から、それこそ獣医科のある大学の新設が決まる前から、学園関係者にさまざまなアドバイスをさせてもらってきた。私は誰よりも日本の大学とアメリカの獣医科大学の表と裏、さらに日本の獣医学・獣医療をよく知る立場として、いかにしていわゆる岩盤規制を突破するとか、いかに政治力を使うか等ということは一切関係のない、純粋にアメリカの獣医科大学の基準(後で述べるAVMAスタンダード)について、つまり本当の意味での獣医科大学のためのAVMAスタンダードと、新しい大学を作るのであれば、まだ日本にはない、AVMAスタンダードのすべてをクリアした、真の獣医科大学を作るのでなければ意味がないということを千葉科学大学(加計学園)のキーパーソン4、5名にプレゼンテーションの形で話したことを思い出す。
    そんな私が今回の騒動に思うこと、また長年、なによりも日本の獣医学・獣医療の発展に力を尽くしてきた獣医師の一人として、黙っているわけにはいかず、いささか出すぎではあるが、意見を述べてみたい。
    ●今回の流れ
    そもそも獣医師を作る獣医科のある大学は、日本にはすでに16校あり、今治で17校目となる。この数についてはあとで述べるとして、日本ではこの52年間、獣医学科の新設と定員の増加が認められてこなかったのは事実であるが、その中でなぜ今治市・加計学園が、突然、このような過程で設立認可と定員増加が決定されたのか、それが私にも理解できなかった。
    長らく認められてこなかったのは、獣医科のある大学の許認可権を持つのは「文科省」であり、その文科省が「地域差はあるが、全体としてこの小さい日本(カルフォルニア州とほぼ同面積)にすでに16校があり、獣医師の数は、全体では足りており、獣医学科新設の必要はない。」という姿勢(事実その通りで、日本の全大学や日本獣医師会は現状を肯定せざるをえないが)のもとに認めてこなかったのである。この「16校・定員930人」という数字が適切かどうかは別として、いわゆる規制緩和を望む者にとって、これは「岩盤規制」と呼ばざるをえなかったことは間違いない。


    ここでまず、日本獣医師会および獣医学会と、アメリカの獣医学会よび獣医師会の差に触れておく。組織の名前は、特に英語にすれば同じであるが、その中身は全く異なる。アメリカの場合は、獣医師会の全員の一人一人が同じ権利義務を持つ、「個人会員」から成り立っているのに対し、日本では、「都道府県単位の獣医師会」が連合会を作っているのにすぎない。また、日本では獣医学会と日本獣医師会は別物であるが、アメリカでは。全米獣医学会=全米獣医師会なのである。
    話を戻し、政府は(地域差はあるが)、獣医師は足りている、という認識ではあるものの、獣医師を作れる獣医学科は、人気の学科の一つであることから、大学の目玉として、また学生確保のため、学科新設を望む学校や自治体も多くあった。その中の一つが、岡山県に本拠地を置く「加計学園」だ。
    加計学園の初代理事長は、獣医学科新設を熱望しており、息子である現理事長は、長い間力を尽くしてきたが、このいわゆる「岩盤規制」にもがいていた。そして、愛媛県今治市は、少子高齢化や経済の衰退に悩んでいた。地方自治体にとって、少子高齢化や人口減少に対処することは、最優先すべき重要な問題であり、その解決策の一つとして大学新設というのは、珍しい話ではない。実際、私が客員教授を務める千葉科学大学(加計学園系列)もそうであり、ここでも獣医科を作ろうとしていた努力のあとがよくわかった。今治市も2007年から10数回にわたり、大学新設を陳情していたという。
    しかし規制の壁は高く、ようやく、鳩山内閣の時に、「2010年度中をめどに速やかに検討する」、というところまでこぎつけた。しかし、それからも数年間、政党が変わっても、長らく膠着状態が続いていたが、安倍内閣が規制改革の一環として、「国家戦略特区」を導入したのち、流れが一変した。そして、2015年12月、安倍首相が自ら議長を務める国家戦略特別区諮問会議にて、ついに今治市(を含む区域)が、全国で10番目の国家戦略特区の認定を受け、加計学園&今治市は、やっと悲願の獣医学部新設にこぎつけたのだ。しかし、実はこの間、申請を検討していたのは、加計学園&今治市だけではなかった。ではなぜ、加計学園&今治市に決まったのか? そこになんらかの「官邸の(総理の)意向」があったのではないか、ということが、今、大きな問題になっているのである。つまり国家権力レベルでの「不公平」である。
    これは国家レベルでの決定事項と、地方自治体による、つまり今治市の決定事項を、時系列に従って具体的に並べ、何がいつ、どのように決定されたのかをよく見てみれば、その問題点を客観的に指摘することができ、誰でも簡単に事実を知ることができる。

    ●新たな獣医学科は必要か?
    さて、ここからが本題である。
    そもそも、「新たな獣医学科」は必要なのか?という根本的な問題である。日本には獣医師を作る獣医科のある大学は、16校あると先に述べたが、実はこの数は、はっきり言って「多すぎる」のである。この間、獣医科大学の数を減らすための合併が、具体化しかけた(国立一次校である九州大学はその中心のひとつであった)が、要であり、当事者である国立二次校の東大OBの教授先生方の反対にあい、世の中は、肝心の獣医師達が抱える問題の真相を知ることもなく、今日を迎えているのである。
    世界の獣医学・獣医療の最先端をいくのは、アメリカである。日本とほぼ同じ面積のカリフォルニア州(人口は日本の約4分の一)をみると、獣医科のある大学はわずか2校(ごく最近まで、カルフォルニア州立獣医科大学1校)のみである。日本は16もの大学がひしめいており、そこへさらに、もう1校増えようとしているのだ。
    むろんすべてレベルの高い大学ばかりであれば、異論はない。しかしながら、日本の獣医学科の実情は、アメリカとは比べ物にならないほど遅れているという事実を、政治家、行政、大学、大学教授、関係者を含め、いったいどのくらいの人が認識しているのであろうか。おそらく、現役の獣医師でさえも、よく分かっていない人が多いだろう。
    獣医学における数多くの優秀な人材が、世界中の各国からからアメリカに渡り、厳しい教育と訓練を受けた上で、厳しい試験に合格し、臨床獣医学各科の自他共に認める専門医(Diplomate)が、各自の母国(ヨーロッパ)に戻った後、英国、オーストラリア、ニュージーランドを中心に、国境を越え、獣医科のある大学が、臨床各科の、AVMAレベル(後述)での専門医集団を目指すことができたことから、世界中の獣医科のある大学も、臨床各科の、AVMAレベルでの専門医集団を目指そうと、急速に変化してきた。(日本も含め、アジアでも同様の動きが始まっている。)
    本来、日本もそのような変身をとげなくてはならないのだが、真のリーダーであるべき日本の獣医学会、獣医師会が真の個人会員制ではないために、全関係者達が、日本が大きく遅れているという認識がないだけでなく、そのようなオープンでフェアな、専門医を育成するシステムを持っていないということに、危機感すら持たず、本来、対処すべきことを反映した獣医学科のある大学の運営ができていない、というところに問題があるのである。
    先に何度か述べたが、アメリカでは、AVMA(全米獣医学会/獣医師会)という組織があり、「AVMAスタンダード」と呼ばれる厳しい基準を設けて、国内外(アメリカ、カナダ、オランダでは、獣医学教育制度は国境がなく、同一のスタンダード)の獣医科大学の認定を行っている。日本で、この基準をクリアしている大学は皆無、ゼロである。


    設置基準の一つを挙げてみると、羊、ヤギ、馬、乳牛、肉用牛、豚、犬、猫、家禽、その他動物が、十分な数がいる環境でないと、獣医師を育成する獣医科大学の設置は認められない。また、学生一人につき、常勤の教授陣が1.2倍以上でなければならない。また、動物教育病院、獣医教育病院そのものが、大学であり、臨床学科ごとに、AVMAスタンダードを満たす専門医が揃っていなければならない。全獣医学大学では、医科救急救命・重篤患者の24時間看護が必要・義務化されており、すべての学生は最低4週間の泊まり込み実習で、救急救命と重篤患者の診断・治療・看護について、徹底的に実学を学ぶことが必須である。
    ちなみに臨床各科以外で、獣医師が最も多く所属する公的機関は軍隊であり、軍隊の公衆衛生、食品衛生はすべて獣医師がその長である。
    ●獣医師は不足しているのか?
    日本では獣医師の不足が叫ばれているが、同時に動物病院はすでに飽和状態だとも言われている。獣医師は多過ぎなのか、それとも足りないのか?
    毎年、国家試験を受けて、獣医師免許を取得するのは約1000人。だが、免許を得たこの1000人の内、すべてが臨床の現場を目指すのではない。約4割がフードや薬品、医療機器などの企業、2割が公務員、そして残りの4割が臨床医、大動物と小動物(動物病院勤務)となる。しかし、この4割、約400人のほとんどが、関東での就職を希望しているのが現状なのだ。つまり都心では、動物病院は飽和状態であるが、地方では獣医師不足だと言える。
    では大学を増やして、獣医師を増やせばいいのか?いや、問題はそこではない。仮に今の倍の2000人になっても状況は変わらないだろう。
    それはなぜか。その答えは公務員としての獣医師の待遇に問題があるということだ。率直に言えば給与が低いのだ。特に地方の動物病院など、せっかく6年制の大学を出て、国家資格を得たにも関わらず、それに見合った給与とは程遠いのが現実である。同じく深刻に不足だと言われている地方公務員の獣医師にいたっては、仕事は激務のうえ、労働条件も悪く、もっと悲惨な状況だ。
    臨床に話を戻すが、現場での獣医師の在り方にも問題がある。アメリカをはじめとする先進国では、獣医師は監督者という立場であり、現場の実務はいわゆるベテリナリー・テクニシャン(獣医技術師)が担当している。にも関わらず、日本ではそれらすべてを獣医師が担当しているため、仕事がこなせず、獣医師が足りないという事態に陥っているのである。また給与面においても、先進国の獣医師は、監督者という立場のため高給であるが、日本ではこのような理由で獣医師は所得が低いため、なり手が少ないわけである。このように単純に大学を増やしても、なんの解決にもならないということが分かってもらえると考える。
    さて、先に述べたように、日本の16校の中に、AVMAスタンダードで認定されている大学は「0」である。そもそも学生の選抜方式からして、日本とは根本的に異なっている。具体的に

    言えば、アメリカでは理系の医学、獣医学(バイオメディカルサイエンス)を理解するのに必要な単位をすべて取得し、理系の大学を卒業して、始めて、獣医科大学への受験資格を得るのである。(獣医師、医師、歯科医師すべて同様。) つまりアメリカのすべての獣医科大学(医科大学、歯科大学)は、実質的な大学院大学なのである。今の日本の受験方式、つまり高校から成績さえよければ、偏差値さえ高ければ、高校からいきなり医師や獣医師、歯科医師になれるような仕組みは、どこの先進国にも見られない。後進国だけである。
    これらのことから分かるように、医学・医療、獣医学・獣医療、歯医学・歯医療において、日本は「後進国」なのである。
    ちなみに日本の国立大学で獣医学科は農学部の一部であり、学問として農学から独立していないということをご存じだろうか。つまり、一般的に言う「獣医学部」「獣医学科」とは、正確に言うと「農学部」の中におかれ、国公立では北大が唯一、農学部から独立した「獣医学科」を持つ以外は、東大など、その他の国立二次校の獣医学科はすべて農学部の一部にすぎないのである。
    大学や政治家、地方自治体は獣医学部を新設しようとしているが、私に言わせると自分達のエゴばかりで、まったく本末転倒なのである。本当に獣医学・獣医療を利用する国民の立場にたって考えるのなら、獣医師のレベルアップ、つまり量ではなく、「生産性」と「質」を重視すべきなのである。
    それにはどうしたらよいのか?大学を新しく作るのではなく、例えば16校の大学を4分の一に減らす。それは小学生でもわかるはず。各大学の予算は4倍になる、マンパワー(教授陣)も4倍になる。それだけでも現状に大きな風穴をあけられるだろう。
    ●本当に必要なことは何か?
    私も、他の日本の臨床医と同様に 日本の獣医学・獣医療の発展のために心血を注いできた。今の獣医学・獣医療に必要なのは、単に獣医師の数を増やすのではなく、「プロフェッショナルな獣医師が、安心して任せることができるオープンでフェアな、各科の優秀な専門医」を育てることが最重要だと考えている。
    そこで、先日、母校である北大の獣医学部と、長年世話になったコロラド州立大学の両者のために「加藤元基金」を立ち上げた。そしてまた、アメリカの獣医科大学の中でも、最高峰の一つといわれるコロラド州立大学(CSU)と、北大とのパートナーシップ協定を実現させたばかりである。それさえも、当初は不可能であるとさんざん言われてきたが、私は「獣医療とはなんのためにあるのか、誰のためのものなのか」を常に考え、机上の空論ではなく、アメリカの制度と、日本の現状を科学的に分析し、確信を持って推し進めているのである。
    今回の加計学園の獣医学部新設問題は、このように何から何まですべてがデタラメである。また、最近のメディアはワイドショー的な面ばかり取り上げ、肝心の獣医学・獣医療業界が抱える問題の解決などすっかりないがしろになってしまった。


    皆さんには目に見える(報道されている)問題だけに振り回されることなく、報道されない「現実」を知っていただきたい。そうすれば、今、日本の獣医学・獣医療に、産業動物、野生動物、ペット動物のすべてを大切にする利用者にとって、本当に必要なことはなんなのかが明確にお分かりいただけるだろう。

     

     


    コメント
    コメントする








       

    calendar

    S M T W T F S
         12
    3456789
    10111213141516
    17181920212223
    24252627282930
    31      
    << December 2017 >>

    selected entries

    categories

    archives

    links

    search this site.

    others

    powered

    みんなのブログポータル JUGEM